ラストコール

物語性に富んだ場面がひとつながりに展開されていく、Lunchmeat Studioによるオーディオビジュアル・インスタレーションは、展示全体を統一する要素となっています。オンライン通話を風刺的に描いた５つのバラッド風の短いシナリオが、毒々しいポジティブな雰囲気の中で、誇張された抽象表現となっています。マルチメディアでの表現は、複層的な視覚・聴覚体験を通じて、鑑賞体験を壮大なものにします。この没入型の作品を構築しているのは、その作品のもつテーマだけではなく、他のアーティストによる作品との強い交わりでもあります。Lunchmeat Studioの他のプロジェクトと同様に、この作品の創作ビジョンもまた、社会の変容や多様な社会経済的影響に関連しています。状況原理に基づく30チャンネルの音響構成と、デジタルディスプレイに映し出される断片的なコメントによって、「ラストコール（最後の呼びかけ）」が文字通りに発せられます。本作の創造のポイントは、鑑賞者に現代社会の重要な課題に参加・協力する段階的な動機付けをすることにあります。人間の存在や自然との関係がいかに儚いかを自覚する必要性を強く訴えかけているのです。 環境に対する訴えはダイナミックに展開していきます。最初はどこから聞こえるのかもわからない、かすかな囁き声のような両義性を帯びた表現が、やがてはオンライン・コミュニケーションの語調を模した、逆説的あるいは皮肉に満ちた呼びかけへと強まっていきます。クラブを思わせるサウンドデザイン、ディスプレイに表示されるテキストメッセージや絵文字が作る独特の美学が、万博の精神でもある、未来の社会の形成に向けた相互協力を呼び掛ける緊急性を物語っています。