2022年12月、大阪・関西万博のチェコ政府代表のオンドジェイ・ソシュカ氏は、20年以上にわたりデザイン・アンド・ビルド方式を用いてチェコ共和国の国家パビリオンを建設してきた後、様々な分野の専門家と協議した結果、匿名の建築コンペに戻ることを決定しました。これは、ブリュッセル、モントリオール、さらには1970年代の大阪などでチェコパビリオンの建設で使用された方法です。
38チームまでがコンペに参加し、2023年3月に世界的に高名な建築家エヴァ・イリチナー氏が率いた専門家審査員会が、Apropos Architectsとテレザ・シュヴァーホヴァー氏の共同で設計された現在では象徴的になっているガラス螺旋のデザインを選出しました。
定礎式と地鎮祭
チェコパビリオンの建設が始まる前に、2024年の5月に伝統的な工事開始の儀式が行われました。それはいわゆる定礎式、つまり夢洲のチェコの土地で礎石を置く象徴的な儀式と地鎮祭、その土地の神々を鎮めるための神道の儀式でした。
地鎮祭とは、新しい建物を建設する前に行われる日本で深く根付いた伝統儀式です。それはその土地に住まう神々の許可を得るためであり、また、工事が順調かつ安全に進行することを祈願するためでもあります。
2025年大阪・関西万博のチェコパビリオンは、建築デザインだけでなく、使用されている材料や技術においても優れています。
パビリオンの構造は、近代的なCLTパネル(直交集成板)でできており、印象的なガラスのファサードと同様に直接チェコで製造され、海路で日本に輸送されました。使用されている木材はチェコの森林から調達され、その環境特性から主要な建築材料として選ばれました。この木材は二酸化炭素(CO₂)の吸収に積極的に役立ち、持続可能な建設の原則をサポートします。
革新的なCLTパネル技術のおかげで、チェコパビリオンが予定より3週間も早く、わずか6ヶ月で建設されました。このような急送的な建設はチェコ共和国だけでなく日本でも驚き、鉄骨の支持要素なしで建てられたこの建設は、現代の木造建築と関連する建築規制について広範な議論を巻き起こしました。 日本では鉄骨の支持要素なしの建物が非常に稀で、そのため、チェコパビリオンで使われたCLTパネルは、チェコ・プラハ工科大学(ČVUT)のエネルギー効率的な建物のための研究センター(UCEEB)の専門家によって実施される一連厳しいの耐久性テストを受ける必要がありました。その結果チェコパビリオンは、この地震多発地域での建設に重要な点、強い地震や台風にも容易に耐えることが確認されました。
ガラスのファサードは建設において同様に重要な部分です。 厳しい日本の基準を満たす総重量55トンのチェコ製ガラスの大型パネルで作られています。その芸術的なデザインは、日本で長年称賛されてきたチェコガラス製造の何世紀にもわたる伝統を踏襲しており、同時にチェコの創造性と工芸と革新性を組み合わせる能力の表現となっています。
綿密な計画、国際的な協力、精密なチェコ製造、そして技術のおかげで、多くの人に不可能だと思われていたことが現実になりました。
それは、チェコから1万キロ離れた大阪で、しかも記録的な速さで実現しました。
その結果で完成された建物は、チェコの建築、デザインと職人技の粋を世界に紹介しています。同時に、チェコの才能と創造性が革新性と決意と融合すると、地理的境界も技術的境界も消えることを証明しています。
建設請負業者は日本の大末建設株式会社です。同社は、地震多発地帯における建物の安全な運用に不可欠な、特殊な耐震技術もパビリオンに装備しました。
建設作業には、チェコ人と日本人の職人の合同チームが参加しました。Stora Enso社NOVATOP社の協力のもとで製造されたCLTパネルの正確な組み立てをチェコの企業A2Timberの専門家が監督しました。
特徴的なガラスのファサードは、AGC Flat Glass Czech社が、ガラスパネルにオリジナルの芸術的なデザインを提供したクリエイティブスタジオKolektiv Ateliersと協力して作成されました。そしてチェコの企業WIEDEN社がガラスパネルの正確な設置を担当しました。